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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
線上閱讀江戸川 乱歩《魔術師(まじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 頁
「夢を見たのか。びっくりするじゃないか」
善太郎氏が、たしなめる様に云うと、妙子さんは強くかぶりを振って、
「夢じゃありません。たしかにこのシーツの上にとぐろを巻いていたんです。あたし、何か重くなったものだから、目を覚したのですもの。……」
「とぐろをまいていたって?」
「エエ、あなた方、今廊下で、誰かにお逢いにならなかって? 大きな、角力取りみたいな人に」
それを聞くと、一同ギョッと色を変えた。角力取りみたいな男! 読者は記憶せられるであろう。第一回の殺人事件は、魔の様な巨人の仕業であったのだ。普通人の倍もある血の手型。闇の中を走り去った、七八尺もある様な大入道。あれだ。「角力取みたいな」という言葉が、忽ちその当時の巨人の幻を描き出した。
その後、賊は魔術師の様な怪人物と分ったので、あれも魔術的な一種の変装であったのだろうと、警察でも、明智小五郎さえも、殊更らその巨人について穿鑿をしなかった。捕縛した小賊共には一応尋ねて見たけれど、誰もその不気味なトリックを知っているものはなかった。
「角力取りだって? お前そんな奴を見たのか」
善太郎氏はただならぬ気色で尋ねた。