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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(三)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 頁

青空文庫

「宅助ではないか」といった。

「ア! 旦那様で」

と、これには驚いて立ち上がった。

「そこにいるのはお米ではないか。久しぶりだな」

「ハイ、永らく気ままに遊ばせていただきました」

「ウム、いよいよ帰るか」

「お蔭様で大阪にも、ゆっくり滞留いたしました」

「それですッかり気がすんだであろう」

と啓之助、ひどく機嫌がよい。

「いろいろと話もいたしたいが、なにしろ三位卿が御一緒でな」

「宅助から聞きましたが、そんな御都合だそうで……」

「いずれ帰国した上で、ゆるゆるいたすが、船の中では一切素知らぬふうを粧っているようにな。よいか」

「旦那。ご安心なせえまし、宅助が呑みこんでおります」

「ではあろうが、乗る間際にも、充分に気をつけてくれ、なにせい連れが、お公卿にしては血の巡りのよすぎるお人だ」

「で、その三位卿様は?」

「いま彼方で、原士の者に何かいい含めておいでになる。その隙をみて、大急ぎでここへ探しに来た訳だ。ウ、なに、弦之丞のことか? いずれこの船が安治川口を出るまでには、何とかして捕まるだろう。とにかく、船の上へ追い込んでからの方策だといっておられたから。お、船といえば、乗ってからも、決して言葉をかけてはならぬぞ。