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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁

青空文庫

ネゲラインの『北欧伝説学』の中に、その昔漂浪楽人が唱い歩いたとか云う、ゼッキンゲン侯リュデスハイムの話が載っているんだ。時代はフレデリック(第五)十字軍の後だがマア聴いてくれ給え。――歌唱詩人オスワルドは、ヴェントシン(ヒヨスの毛茸ならんと云わる)を入れたる酒を飲むと見る間に、抱琴を抱ける身体波のごとくに揺ぎはじめ、やがて、妃ゲルトルーデの膝に倒る。リュデスハイムは、かねてカルパトス島(クリート島の北方)の妖術師レベドスよりして、ヴェニトシン向気の事を聴きいたれば、ただちに頭を打ち落し、骸とともに焚き捨てたり――と。これは漂浪楽人中の詩王イウフェシススの作と云われているが、これを史家ベルフォーレは、十字軍によって北欧に移入された純亜剌比亜・加勒泥亜呪術の最初の文献だと云い、それが培って華と結んだのがファウスト博士であって、彼こそは中世魔法精神の権化であると結論しているのだ」

「なるほど」と検事は皮肉に笑って、「五月になれば、林檎の花が咲き、城内の牛酪小屋からは性慾的な臭いが訪れて来る。そうなれば、なにしろ亭主が十字軍に行っているのだからね。その留守中に、貞操帯の合鍵を作えて、奥方が抒情詩人と春戯くのもやむを得んだろうよ。