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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁

青空文庫

「それでは、まだ御存じないのですか」法水はちょっと驚いた素振を見せたが、厳粛な調子で云った。

「実は、終曲近くで、二つの提琴が弱音器を付けたのですよ。ですから、かえって私は、ベルリオーズの幻想交響楽でも聴く心持がしました。たしかあれには、絞首台に上った罪人が地獄に堕ちる――その時の雷鳴を聴かせるというところに、雹のような椀太鼓の独奏がありましたっけね。そこに私は、算哲博士の声を聴いたような気がしたのです」

「マア、とんでもない誤算ですわ」と鎮子は憫笑を湛えて、

「あれは、算哲様の御作ではございません。威人の建築技師クロード・ディグスビイ自作ものなのです。とにかく、あんなものをお気になさるようじゃ、もう一人死霊がふえた訳ですわね。ですが、貴方の対位法的推理にぜひ必要なものなら、なんとか捜し出してまいりましょう」

法水がしばらく自己を失っていたのも、けっして無理ではなかった。彼がジョン・ステーナー(今世紀の当初病歿した牛津(オックスフォード)の音楽科教授)の作と推測し、それに算哲が、何かの意志で筆を加えたものと信じていた鎮魂曲が、人もあろうに、この館の設計者ディグスビイの作だったのだ。