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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
第六篇 算哲埋葬の夜
一、あの渡り鳥……二つに割れた虹
紙谷伸子の登場――それが、この事件の超頂点だった。と同時に、妖気気の世界と人間の限界とを区切っている、最後の一線でもあったのだ。何故なら事件中の人物は、クリヴォフ夫人を最終にしてことごとく篩い尽されてしまい、ついに伸子だけが、残された一粒の希望になってしまったからだ。しかも、かつて鐘鳴器室で彼女が演じたところのものは、とうてい曖昧模糊とした人間の表情ではない。いかなる畸矯変則をもってしても律しようのない……換言すれば、殺人犯人の生具的表現を最も強烈に表象している、一個の演劇用仮面に相違ないのである。それゆえ、ここでもし法水が、伸子の秤量を機会に転回を計ることが出来なかった暁には、恐らくあの暗黒凶悪な緞帳が、事件の終幕には犯人の手によって下されるであろう。否そうなることは、この事件の犯罪現象を一貫しているのような怪物、――すなわち事件の推移経過が明白にそれへ向って集束されてゆこうとしても、法水でさえどうにも防ぎようのない、あの大魔霊の超自然力を確認するにほかならないのである。それゆえ、伸子の蒼白な顔が扉の蔭から現われると同時に、室内の空気が異常に引き緊ってきた。