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こくしかんさつじんじけん

黒死館殺人事件

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁

青空文庫

まるで鑿ででも仕上げたように、繊細をきわめた顔面の諸線は、容易に求められない儀容と云うのほかはなかった。それが時折引き締ると、そこから、この老婦人の、動じない鉄のような意志が現われて、隠遁的な静かな影の中から、焔のようなものがメラメラと立ち上るような思いがするのだった。法水は何より先に、この婦人の精神的な深さと、総身から滲み出てくる、物々しいまでの圧力に打たれざるを得なかった。

「貴方は、この室にどうして調度が少ないのか、お訊きになりたいのでしょう」鎮子が最初発した言葉が、こうであった。

「今まで、空室だったのでは」と検事が口を挾むと、

「そう申すよりも、開けずの間と呼びました方が」と鎮子は無遠慮な訂正をして、帯の間から取り出した細巻に火を点じた。「実は、お聴き及びでもございましょうが、あの変死事件――それが三度とも続けてこの室に起ったからでございます。ですから、算哲様の自殺を最後として、この室を永久に閉じてしまうことになりました。この彫像と寝台だけは、それ以前からある調度だと申されておりますが」

「開けずの間に」法水は複雑な表情を泛べて、「その開けずの間が、昨夜は、どうして開かれたのです?」