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おもかげしょう

おもかげ抄

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《おもかげ抄(おもかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,947 字 · 22 頁

青空文庫

――裏の空地へ出て子供達に撃剣の心得を教えていると、

「お師匠さま、お師匠さま」

と一人の子供がとんで来て、「向うの原っぱでお侍が斬合いをやってますよ」

「なに斬合い」

「ほらあすこに、――」

云われて振返ると、鎮守明神社へ行く道を左へ、ちょっと下りた草原で、五六人の武士が斬結んでいる。真昼の光にきらりきらりと白刃の描く虹が見えたから、

「皆ここを動くでないぞ」

と云って孫次郎は大剣を執る。

「直ぐ戻ってくる、出てはならんぞ」

重ねて云い捨てざま、走りだした。

草原の端まで行くと、孫次郎は足を停めて様子を見やった、――斬結ぶ相手は一人、寄手は五名、孰れも浜松家中の武士と見えるが、相手の一人は格段に腕が冴えていて、殆ど五人を寄せつけない。

「えーい!」

鋭い絶叫が起った、五人の内右から二番めにいた若侍が、猛然と上段から斬りつけたのである。

「――おっ!」

応えの声。相手の体がばねのように跳る、白刃がきらりと舞った。

「うっ!」

斬込んだ若侍は横さまに※(「てへん+堂」、第4水準2-13-41)と倒れる、同時に左端の一人が踏込む、刹那、

「えいッ」

さっと躱しざま、相手が逆に下から払いあげた、踏込んだ方は危く半身を反らして避けたが、剣は手を放れて彼方の叢へ飛んでいた。