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おもかげしょう

おもかげ抄

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《おもかげ抄(おもかげしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,947 字 · 22 頁

青空文庫

四

「五人掛りで駄目だったのを、お師匠さまはたったひと太刀でやっつけちゃった」

わいわい騒ぐのを孫次郎は呼吸も変らぬ静かな口調で制しながら、

「さあさあ、もう剣術は了いだ、お習字をするからみんな手を洗ってお上り」

そう云って家の中へ入った。

四

それから二三日経った或る日。

孫次郎が寺小屋の教授を終って帰ると間もなく、先日馬上で見た老武士が、なんの前触れもなく訪れて来た。

「ああ是は、――」

孫次郎は驚いて、

「斯様な茅屋へ宜うこそ御入来、先ず」

と鄭重に座へ招きながら、

「椙江、お客様じゃ」

奥へ振返って呼んだが、直ぐ向直って、「御覧の如き浪宅、何のお構いも成りませぬ、どうぞお許し下され度い」

「御挨拶却って痛み入る」

老武士は容を改めて、「拙者は井上播磨守の家臣、大番頭にて沖田源左衛門と申す」

「申後れました、私鎌田孫次郎と申します」

「先日は大事の際、よくぞ御助勢下さった、どうでも討たねばならぬ奴、幸い貴殿のお蔭を以て仕止め、討手の者面目相立ってござる。ただ御意の事ゆえ、表向きに貴殿の御披露がならぬこそ残念――是は些少ながら拙者一存のお礼代り、御笑納下さるよう」