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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

線上閱讀佐々木 邦《ぐうたら道中記(ぐうたらどうちゅうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 頁

青空文庫

「時に今晩は何うしてもやはり古市泊りでございますか?」

とお父さんが遺憾そうに老人に尋ねた。

「はい。古市へ泊って伊勢音頭を見なければ話になりませんからな。あなた方は何うでもやはり鳥羽でございますか?」

と老人は憐れむように訊き返した。

「鳥羽は朝の海が何とも言えないそうで、伊勢へ行ったら鳥羽に限ると教えられて参りましてね、宿屋まで最早定めてあります」

「海の景色は二見の日の出が好いそうで、私は今夜は古市明晩は二見と定めてあります。伊勢音頭と日の出を御覧にならないのは惜しうございますよ」

見物客の予定は信仰箇条のようなものだ。各自我が仏貴しで、自分のが一番本式だと思い込んでいるから可笑しい。先輩から聞いた聊かの知識を根拠として絶対的の断定を下し、相手に選択の自由を許さないところは全く宗教に似ている。団さんの御賢兄の如きは、

「仙吉や、参宮を先に済ましてから鳥羽の皆春楼に泊って、二見の浦は翌日廻しにすると一番手順が宜いよ。伊賀の上野へは未だ日の高い中に着くから町を見物しても友忠でゆっくり出来る。月瀬へは翌朝九時頃に自動車が出るから……」

という調子でもう疾うに梅が散っているにも頓着なく自分の過去の日程を時間さえその儘僕達に踏襲させようとした。