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それから

それから

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁

青空文庫

そうして起き上がった。

膝の周囲に、まだ三四匹這っていたのを、薄い象牙の紙小刀で打ち殺した。それから手を叩いて人を呼んだ。

「御目醒ですか」と云って、門野が出て来た。

「御茶でも入れて来ましょうか」と聞いた。代助は、はだかった胸を掻き合せながら、

「君、僕の寐ていたうちに、誰か来やしなかったかね」と、静かな調子で尋ねた。

「ええ、御出でした。平岡の奥さんが。よく御存じですな」と門野は平気に答えた。

「何故起さなかったんだ」

「余まり能く御休でしたからな」

「だって御客なら仕方がないじゃないか」

代助の語勢は少し強くなった。

「ですがな。平岡の奥さんの方で、起さない方が好いって、仰しゃったもんですからな」

「それで、奥さんは帰ってしまったのか」

「なに帰ってしまったと云う訳でもないんです。一寸神楽坂に買物があるから、それを済まして又来るからって、云われるもんですからな」

「じゃ又来るんだね」

「そうです。実は御目覚になるまで待っていようかって、この座敷まで上って来られたんですが、先生の顔を見て、あんまり善く寐ているもんだから、こいつは、容易に起きそうもないと思ったんでしょう」