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それから

それから

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《それから》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 172,794 字 · 347 頁

青空文庫

茶碗を膳の上へ置いて、門野から手紙を受取って読むと、明朝何時までに御出の事という文句があった。代助は、

「御役所風だね」と云いながら、わざと端書を門野に見せた。門野は、

「青山の御宅からですか」と叮嚀に眺めていたが、別に云う事がないものだから、表を引っ繰り返して、

「どうも何ですな。昔の人はやっぱり手蹟が好い様ですな」と御世辞を置き去りにして出て行った。婆さんは先刻から暦の話をしきりに為ていた。みずのえだのかのとだの、八朔だの友引だの、爪を切る日だの普請をする日だのと頗る煩いものであった。代助は固より上の空で聞いていた。婆さんは又門野の職の事を頼んだ。拾五円でも宜いから何方へ出して遣ってくれないかと云った。代助は自分ながら、どんな返事をしたか分らない位気にも留めなかった。ただ心のうちでは、門野どころか、この己が危しい位だと思った。

食事を終るや否や、本郷から寺尾が来た。代助は門野の顔を見て暫らく考えていた。門野は無雑作に、

「断りますか」と聞いた。代助はこの間から珍らしくある会を一二回欠席した。来客も逢わないで済むと思う分は両度程謝絶した。

代助は思い切って寺尾に逢った。