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ぼくのぼうしのおはなし
一房の葡萄 他四篇
有島 武郎
線上閱讀有島 武郎《一房の葡萄 他四篇(ぼくのぼうしのおはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,712 字 · 39 頁
僕の帽子のお話
「僕の帽子はおとうさんが東京から買って来て下さったのです。ねだんは二円八十銭で、かっこうもいいし、らしゃも上等です。おとうさんが大切にしなければいけないと仰有いました。僕もその帽子が好きだから大切にしています。夜は寝る時にも手に持って寝ます」
綴り方の時にこういう作文を出したら、先生が皆んなにそれを読んで聞かせて、「寝る時にも手に持って寝ます。寝る時にも手に持って寝ます」と二度そのところを繰返してわはははとお笑いになりました。皆んなも、先生が大きな口を開いてお笑いになるのを見ると、一緒になって笑いました。僕もおかしくなって笑いました。そうしたら皆んながなおのこと笑いました。
その大切な帽子がなくなってしまったのですから僕は本当に困りました。いつもの通り「御機嫌よう」をして、本の包みを枕もとにおいて、帽子のぴかぴか光る庇をつまんで寝たことだけはちゃんと覚えているのですが、それがどこへか見えなくなったのです。
眼をさましたら本の包はちゃんと枕もとにありましたけれども、帽子はありませんでした。僕は驚いて、半分寝床から起き上って、あっちこっちを見廻わしました。