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せけんし

世間師

小栗 風葉

線上閱讀小栗 風葉《世間師(せけんし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,390 字 · 36 頁

青空文庫

」と銭占屋は皮肉を言う。

「笑、笑談言って。私なんざ年ばかしいい年して、からもう意気地がねえもんだから、いくら稼いでも、やっと二人が口を糊して行くだけでげさ、へへへへ。そこへ行っちゃ兄さんなんかすばらしいもんだ、ちょいと夕方から二三時間廻ってくりゃ、腹巻にザクザクいうほど握ってくるんだから――なあ嚊、羨しい腕じゃねえか。おい、そんなにハンダを使っちゃしょうがねえ、もっと薄く、薄く……」と口小言を言いながら、為事の方に向いてしまう。

すると、ある日の事だった。ハンダの下地に塗る塩酸がなくなったから、町の薬屋へそれを買いに行った万年屋は、ものの三十分ばかりも経つと、真蒼になって帰ってきた。

「薬は?」と女房が聞くと、

「それどころじゃねえ、大変なことができた。」と言って、何やら女房とボソボソ囁いていた。

それから、女房に草鞋を買ってこさせて、早午飯を食って、身軽に支度をしてどこへか万年屋は出て行った。

その時はちょうど銭占屋も遊びに出ていたし、ほかの同宿はいずれも昼稼ぎの者で、万年屋夫婦のほかには、二階に私一人だった。私は毎日銭占屋の為事を手伝ってやっている。