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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

ただこの時代の貴紳の芸術が、花鳥風月を愛でる風流となって久しいから、その実感ということは、一層念を入れ、一層細かく自然を見るという方へ向う。

この態度が行きついて為兼の『玉葉集』の風体がうまれたと思う。そして『風雅集』へつづくのである。それは繁雑なくらい念入りに自然をこまかく見る行き方であるが、その結果として、『玉葉』『風雅』に実を結んだ自然の歌は、一種独特の自然を構成したのである。

もとより風物の種類は、『古今集』この方の範疇を出ない。花を愛し、月を愛でるのであるが、その同じ自然を如何な角度から見るかということが大切である。『玉葉』『風雅』に完成した自然歌は、ありきたりの風物を、つねに天象の変化と結びつけて眺めるのである。霞の間から見る。雲間からもれる夕日に照して見る。雨の中に見る。霧のはれゆくあとからあらわれでる姿を眺める。このようにいいつづけて来ればすでに一つの印象を得られたであろうように、多くは模糊たる水蒸気のへだての中から見るか、雲霧の流れに一部はかくれ、一部は現われたものを見るのである。そうでなければ、雲霧のうごきにつれて、見えなかったもののあらわれわたるのを見るのである。