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ちゅうせいのぶんがくでんとう

中世の文学伝統

風巻 景次郎

線上閱讀風巻 景次郎《中世の文学伝統(ちゅうせいのぶんがくでんとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,977 字 · 230 頁

青空文庫

またはかくれ行くのを見るのである。

今一つは、昼間の景はおもに夕方どきの光線で見る。斜陽にありありと照し出されたり、ほのかに日のあたっていたりするものを見る。勿論、赫々たる太陽のもとに見たようなものもあるが、おもには夕日である。そしてこれはいわば物を光線の中で陰影とともに見るのである。

ともかく、これまで叙景的といえば陰影のない大和絵風の色彩感をそそる歌が多かったのに、ここで大気と外光との陰影を伴った自然を歌にしようとしはじめたのである。ふとその点に気がついて『玉葉』『風雅』の二集を読まれる人があるならば、この自然の捕え方は、かつてなかった新手であることを覚られるに違いない。そして、ことに『風雅集』は、その点が特に感じられるように、これでもかこれでもかという態度で同傾向の歌を羅列してあるのである。こころみに一例を挙げよう。先ず春、

霞む夕     夕暮の霞のきはにとぶ鳥のつばさも春のいろにのどけき

しづみはつる入り日のきはにあらはれぬ霞める山のなほ奥の峯

長閑なる霞の空のゆふづく日かたぶく末にうすき山の端

霞む夕の雨   さびしさは花よいつかのながめして霞にくるゝ春雨の空