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えいがをつくるはなし

中谷宇吉郎集 第三巻

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《中谷宇吉郎集 第三巻(えいがをつくるはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 46,667 字 · 95 頁

青空文庫

前夜旭川で泊った私たちの一行が上富良野の駅へ下りたのは、まだ朝の七時前であった。北国の真冬のこととて、勿論まだ陽は出ていなかった。しかし珍しく晴れ渡った空は一面に、高緯度の土地に特有な青磁色に淡く輝いていた。そして大地の上を低く、あるか無きかの靄がひっそりと蔽っていた。こういう厳寒の夜に低くたれこめる靄は、地上のすべてのものを凍らしてしまうような靄である。

あとで聞いた話であるが、この朝は零下二十七度まで下ったということである。出迎えの村役場の助役さんとも五年振りの邂逅であった。暫く挨拶をかわしているうちにも、もう鼻の中が冷え切って、冷い空気がそのまま胸の中まで浸み通るような気がした。それでみんなで大急ぎに身仕度をして、すっかり防寒服につつまれて、馬橇の上に三人ずつ行儀よく丸く納まることにした。

ちょうど達磨を三つ並べたような恰好で、馬橇は走り出した。まだ明け切らぬ夜が、馬橇のまわりにつきまとって、雪の原野が遠くまで銀鼠色にひろがっていた。軽い興奮と、まだ幾分残っているかすかな健康上の不安とがあった。私はじっと馬橇の上にうずくまって、澄み切った氷のような空気を息を細めてそっと呼吸しながら、陽の出るのを待っていた。