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「もくせい」ごうのなぞ
中谷宇吉郎集 第六巻
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《中谷宇吉郎集 第六巻(「もくせい」ごうのなぞ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,784 字 · 269 頁
武見太郎氏につれられて、初めて牧野さんのところへ伺ったのは、たしか今度の戦争の初め頃だったかと思う。松濤の御屋敷がまだ戦災にあわなかった前のことである。無雑作に繁った広い庭を前にした広間で、籐椅子を円く並べて、御馳走になり、夜おそくまで話した。安倍能成さんや仁科博士、藤岡博士などと一緒のことが二、三度あった。
二・二六事件がまだそう遠い昔の話でなく、東条軍閥の勢威が一世を蓋っていた時代のことである。牧野さんはなるべく表面に出ないように静かな生活をしておられた。しかし何といっても、唯一人生き残られた明治の功臣であり、かつ家柄も高いので、日本の近代史に残る家名の人たちが多く出入りされていたようである。
松濤の御屋敷へ伺って二度目だったか、親戚の若い者たちに話をしてくれとのことで、映画をもって行って、雪の話と、たしか気球による霧の研究の話とをしたことがある。広間と次の間と、それに縁側まで入れて、七、八十人の御客様があった。雪の映画は、アメリカへ送った英語版であった。今度の戦争中のあの空気の中で、牧野さんの邸宅で英語版の映画を見せることは、少し無鉄砲だったかもしれないが、牧野さんは非常に喜ばれた。