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じんがいまきょう

人外魔境

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《人外魔境(じんがいまきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 101,713 字 · 205 頁

青空文庫

血の禍い、やはりマヌエラも純粋の白人ではない。しかし、いま一人もものを言わないこの小屋のなかで、どうして知りもせぬドイツ語で喋ったのだろう。それが、反響言語のじつに奇怪なところである。遠くて、普通の耳には聴えぬような音も、異常に鋭くなった発作時の、聴覚には響いてくるのである。

今しも、バイエルタールの部下二人が靴音立てて、小屋のまえを通り過ぎていったところを見ると、マヌエラは、彼らの会話を口真似したに違いない。それでは水牛小屋の地下道というのこそ、唯一のまぎれのない逃げ道だ。

こうして、マヌエラをめぐるあらゆる疑惑が解けた。まるでハイド氏のような二重人格も、怪奇をおもわせたドドの魅魍も、さらに、いま五人のものが浮びあがろうとすることも、畢竟マヌエラに可憐な狂気があるからだった。座間は、息をふきかえした愛情のはげしさに泣きながら、もう一刻も猶予できないことに気がついた。

「諸君、助かるかもしれん。とにかくすぐに水牛小屋へゆこう」

まず、醜言症を聴かせぬためマヌエラには猿轡をし、ドドを連れて、そっと一同が小屋を忍びでたのである。そこには、地下からうねうねと上へのびて東方の絶壁上へでる、やっと這ってゆけるほどの地下道があった。