輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
はるかなたび
原民喜戦後全小説
原 民喜
線上閱讀原 民喜《原民喜戦後全小説(はるかなたび)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 60,577 字 · 124 頁
……やがて、静三にも飛躍の季節が訪れた。中学を卒えると、京都の学校へ入っていたのだが、間もなく彼は社会運動の群に加わっていた。いつも善意の眼を輝かし、ものに駆られるように動きまわった。それは一面、感傷的のものでもあったが、この頃ほど、人間と人間の核心がぴったり結びついている時期はなかった。恰度、関東大震災の疲れはてた罹災者を乗せた列車が京都駅を通過する時、学生の静三はホームに立って、茶菓の接待をしていた。疲れきっている人の眼の中にも、もう明日の希望のあかりが見えるような気持がした。そういう希望のやりとりを一人の女生徒と手紙で繰返した。すると、猛然と恋情が点ぜられた。それから彼は或る教授の選挙運動のため寝食を忘れて奔走した。だが、感激の日も長くはつづかなかった。ひどい喀血がすっかり躯の自信を奪った。突然、矢も楯もたまらぬホームシックに陥り、静三は広島の家へ戻って来た。すると、もう女生徒からの文通もなかった。
それから静三は父の写真が長押に懸けてある仏間に寝起しながらぶらぶら暮した。東京の学校を卒えて戻って来た兄の敬一は間もなく結婚して、これも同じ家の二階で暮すようになった。