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こきんしゅうまきのご
古今集巻之五
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《古今集巻之五(こきんしゅうまきのご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,482 字 · 43 頁
灸寺まで自分で父を送るつもりだったが、家扶の伊太夫を代りにやり、自分は居間にこもって、自分の心とたたかった。
昏れがたに伊太夫が帰って来、父が無事に法頭山へ着いたことや、宿坊も勝手のよいことなどを報告した。主計は殆んど聞いていず、うんうんと頷きながら、自分をとらえている怒りが、どう制しようもない、とうてい制しきれるものではない、と思っていた。――夜になってから、主計は机に向って、細野源三郎へ決闘状を書いた。書いては破り、書いては破りしていたが、十時を打つ鐘を聞いたとき、筆を持つ手が動かなくなり、彼は机に両肱を突いて眼をつむった。
――本気だから苦しかったのよ。
なんの関連もなく、お袖の云った言葉が思いだされたのである。
――手代とあやまちをおかしたときも、いま旦那をもっていながら浮気をしても、なにも心に咎めることはない、でも米吉のときはそうではなかった。手を触れさえもしなかったのに、苦しくって辛くって堪らなかった。それは本気だったからだ、とお袖は云った。
つむった眼の裏に、杉江の姿がうかび、杉江と向きあって坐った、細野源三郎の姿が見えるように思った。