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こきんしゅうまきのご

古今集巻之五

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《古今集巻之五(こきんしゅうまきのご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,482 字 · 43 頁

青空文庫

主計は出ていった。五郎太は歌集をめくってみた。それは胡蝶装の本で、よく読まれたのであろう、かなり手ずれているし、歌のところどころに、薄墨の細筆で書き入れがあった。彼はそこになにかんであるかと思ったが、終りまで一枚ずつ、紙を左右にひろげながらみていったが、ついになにも出て来なかった。

主計が戻って来て、「柳田へ使いをやった」と云いながら、五郎太の持っている物に眼をとめた。

「古今集だ」と云って五郎太は、それを主計に渡した、「夜具の下にあったのだが、杉江さんのものか」

「さあ、――」主計は本をめくってみた。

「いましらべてみたが、なにもはいってはいないようだ」

「たぶん杉江のだろう」と主計は歌集を閉じながら云った、「娘のころ松崎雅成の塾で和学をまなんでいたそうだし、ここへ来てからも幾たびか歌会などに出ていたようだ」

「そういう本もしらべてみたのか」

「いや、本は一冊もなかった、これを見るのはいまが初めてだ」

「おかしいな」と五郎太が云った、「松崎塾でまなび、それからも歌会に出ていたというのなら、その方面の書物が五冊や十冊はあっていい筈じゃないか」

主計は記憶をたどるような眼つきをし、やがて首を振った、「いや、書物は見たことがない、さっきからすっかり捜したが、このほかになにもないことは慥かだ」