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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
線上閱讀和辻 哲郎《古寺巡礼(こじじゅんれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,765 字 · 285 頁
そのごとく恋においても勇敢であった。そうして男が多妻であるごとく、女も、つぎつぎにではあるが、多夫に見ゆることを辞せなかった。万葉の女詩人鏡女王は、もし額田姫と同人であるならば、白鳳期の代表的人物を三人とも自分の夫とした。大仏鋳造時代の執政者橘諸兄の母である橘夫人は、後に藤原不比等の妻として光明后を生んだ。
このような天平の女がただ単純な抒情詩的な心持ちばかりでその日を送っていたとは思えない。人生と文化との広濶な海面を見わたす能力が当時の男にあったとすれば、女にもまたあったであろう。インドとシナとの爛熟した文化生活が当時の男に感染していたとすれば、女にもまた感染していたであろう。
この方面のことについては『万葉集』は証拠を見せてくれない。光明后宮の維摩講に唱われた仏前唱歌「しぐれの雨間無くな降りそ紅ににほへる山の散らまく惜しも」のごときは、仏に対する感情が全然表現せられていない点でわれわれを驚かすのである。しかし『万葉集』の世界と仏教芸術の世界とは全然食い違っている。それは単に抒情詩と造形美術との差違ではない。趣味や要求や願望や、要するに心情の根本をなすものの差違である。