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こじじゅんれい

古寺巡礼

和辻 哲郎

線上閱讀和辻 哲郎《古寺巡礼(こじじゅんれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,765 字 · 285 頁

青空文庫

日暮れ近くについた薬師寺には、東洋美術の最高峰が控えている。

もう時間過ぎで見物ができないはずのところを、Y氏の熱心な斡旋で、われわれの前に大きい鍵をさげた小僧が立ってくれた。小さい裏門をはいると、そこに講堂がある。埃まみれの扉が壊れかかっている。古びた池の向こうには金堂の背面が廃屋のような姿を見せている。まわりの広場は雑草の繁るにまかせてあって、いかにも荒廃した古寺らしい気分を味わわせる。

講堂の横の扉のところで案内の僧が立ち留まると、どうだ見るかとZ君がいう。さよう、ここまで来たものだから。まあ話の種にね。こんな問答のあとで大きい鍵が荒々しく響いて、埃だらけの扉が開く。中には黒白だんだらの幔幕が一面に張りまわしてあった。それをくぐると、丈六の薬師三尊がガランとした堂の幽暗のうちに、寂然としてわれわれを見おろしている。わたくしは無造作にそれを見上げて、おやと思った。そこにある銅像は見ても見なくてもいいような拙いものではなくて、とにかく古典的な重味を持ったかなりの大作であった。この像をほめる人があるが、なるほど本当かな、と思いながら、わたくしは横へまわった。