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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
線上閱讀和辻 哲郎《古寺巡礼(こじじゅんれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,765 字 · 285 頁
その銀色の面を区ぎる軒の線の美しさ。左半分が天平時代の線で、右半分が鎌倉時代の線であるが、その相違も今は調和のある変化に感じられる。その線をうける軒端には古色のなつかしい灰ばんだ朱が、ほの白くかすれて、夢のように淡かった。その間に壁の白色が、澄み切った明らかさで、寂然と、沈黙の響きを響かせていた。これこそ芸術である。魂を清める芸術である。
N君の泊まっている家はこの芸術に浸り込んだような形勝の地にあった。門を一歩出れば三月堂は自分のものである。三日月の光で、あるいは闇夜の星の光で、あるいは暁の空の輝きで、朝霧のうちに、夕靄のうちに、黒闇のうちに、自由にこの堂を鑑賞することができる。雨にうたれ風に吹かれるこの堂の姿さえも、見洩らさずにいられるであろう。
家の人が活動写真を見に行った留守を頼まれて、N君は茶の間らしいところにいた。ペンと手帳と案内記とが座右にあった。当麻寺へ行って来たことを話すと、君はあの塔の風鐸をどう思います、ときく。わたくしは風鐸にまで注意していなかったので、逆にそのわけを尋ねた。――いや、あの形がお好きかどうか、ききたかったのです。