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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
線上閱讀和辻 哲郎《古寺巡礼(こじじゅんれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,765 字 · 285 頁
を現わしている。もとよりそれは近代人の眼から見れば大まか過ぎる写実であるかも知れない。しかしこの放胆な大まかさのうちには古典的な力強さがあふれている。かすかに彎曲する素直な線のうしろにも人の手の不思議な美しさに対する無限の驚異と愛着とがひそんでいるように思われる。かつてはこの線を無表情として、「線は殆んど無意味にして形状をつくり彩色の罫界たらしむるに過ぎず」と批評した人もあった。この種の見解のゆえに線画は遊戯に堕したのではないであろうか。今はこの古典的な力強い芸術がわれわれの芸術の正当な祖先とならなくてはならない。この「手」の精神によって線画のうちにも新しい道が切り開かれなくてはならない。あの手に、ことにあの左手に、深い愛着を感ずる心は、同時に現代の日本画を非難する心である。もっともこの手の美しさは単に線の画としての美しさではないかも知れない。あの半ば剥げた色彩と、その間に点々として存する白い剥落面とは、あたかもそこに重厚な絵の具をぬりつけたような、すばらしい効果を持っている。この厚みの感じは、一つはあの線の力強い引き方にもよるであろうが、またこの剥落の効果に負うところも少なくはあるまい。