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こじじゅんれい
古寺巡礼
和辻 哲郎
線上閱讀和辻 哲郎《古寺巡礼(こじじゅんれい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 143,765 字 · 285 頁
もしあの良弁像が自作であるならば、良弁は第一流の彫刻家であるが、もし彼の配下の彫刻家もしくはその弟子があれを刻んだとすれば、彼は天下随一の彫刻家を養成したわけである。実際良弁像に現われたような優れた写実の腕前は、天平時代にも貞観時代にも珍しい。あれの造れる人なら確かに三月堂や聖林寺の観音も造れたろうという気がする。東大寺の一派が天平芸術の中核をなしているのは、確かに天才が良弁の近くにいたために相違ない。大仏鋳造のごときもこれと離して見ることはできない。聖武帝をこの決意に導いたのが良弁だという『元亨釈書』等の説も、恐らく真実であろう。ただあの巨大な堂塔と巨大な金銅仏とを最初に幻想したのが良弁であったかあるいは他の天才であったかは知ることができぬ。
薬師寺の銅像や法隆寺の壁画ができてから三月堂の建造に至るまでには、少なくとも二十年余りの歳月がたっている。それから大仏の鋳造が計画せられるまでには、また十年の間がある。開眼供養はなおその十年後である。もしある天才芸術家の在世を考えるならば、この歳月によって年齢の関係をも顧みなくてはならぬ。一人の天才の存否は時代の趨勢よりも重い。