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あづまばし

問はずがたり・吾妻橋 他十六篇

永井 荷風

線上閱讀永井 荷風《問はずがたり・吾妻橋 他十六篇(あづまばし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 75,586 字 · 159 頁

青空文庫

おかみさんはそれとなくその男の様子を見ると、これから買出しに行くものらしく、車の後には畳んだズックの袋らしいものを縛りつけている。おかみさんは恐る恐る

「旦那、何かお買物ですか。」と話しかけた。

「駄目だよ。こちとらの手にゃおえないよ。」

「売惜しみをしますからね。容易なこッちゃありません。」

「全くさね。それにお米ときたらとても駄目だ。いいなり放題お金の外に何かやらなけれァ出しそうもないよ。」

「わたしもさんざ好きなことを言われたんですよ。それでもやっと少しばかり分けて貰いました。」

「この掛合は男よりも女の方がいいようだね。一升弐百円だって言うじゃないか。うそ見たようだ。」

「東京へ持込めば、旦那、処によるともっと値上りしますよ。御相談次第で、何なら、お譲りしてもいいんですよ。」

「そうか。それァ有りがたい。何升持っている。」

「一斗五升あります。持ち重りがするんでね、すこし風邪は引いてますし、買っておくんなさるなら、願ったり叶ったりです。」

「じゃ、おかみさん。一升百八十円でどうだ。」

「その相場で買って来たんですから、旦那、五円ずつ儲けさして下さいよ。」

男はおかみさんの袋を両手に持上げて重みを計り、あたりに一寸気を配りながら自転車の後に縛りつけた袋と、棒のついた秤とを取りおろした。