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ちきゅうとうなん
地球盗難
海野 十三
線上閱讀海野 十三《地球盗難(ちきゅうとうなん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 頁
「誰か来てエ。助けて下さ―い。……」
お美代は必死に呼ばわった。そのときブーンという気味のわるい羽音がして、大きな真黒なものが草叢の中から飛び出してきた。それは例の巨大甲虫に違いなかった。その怪虫は、櫟の木の間を縫って低く飛びながら、だんだんとお美代の方に近づいてくるのだった。
「あッ、――」
彼女にとっては手にもっていたビスケットの缶が唯一の武器だったから、これをうちふりうちふり一生懸命に防戦した。巨大甲虫はお美代の死にもの狂いの勢いに辟易したものか、そのまわりを遠く離れてグルグルと二三度飛び廻っていたが、やがて次第に遠のいて、どこともなく飛び去ってしまった。
「どうしよう……」
お美代は、ポロポロ流れ出てくる涙を払いながら、争闘の跡ののこる草叢の方を見つめた。恐ろしい境域にはちがいなかったが、誰も救いの声を聞いて駆けつけてくれる者もない有様だから、このまま自分一人が逃げてかえることはできなかった。もしそんなことをすれば、あの仲善しの武夫は、生命を落としてしまうかもしれないのだ。
(あそこの草叢のところへ行ってみよう)
お美代は決心をして、とうとう草叢の中へ分け入った。