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なつむしあんどん
夏虫行燈
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《夏虫行燈(なつむしあんどん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,200 字 · 37 頁
彼の自白に依って、総ては、明白になった。
市之丞も又、かねてから、お小夜を恋していた一人だったのである。
だが、お小夜はそれも、平四郎に対するのと同じように、何の警戒もしなかったし、甚三郎に向って、べつに注意もしていなかった。
――けれど市之丞としては、多年の恋に、業を煮やし、あらゆる術策を尽した上の――自暴自棄なのであった。その果に、彼女の良人と選ばれた甚三郎を、自滅させる為に、二人の浪人を雇って、歌仙本を盗めと唆かし、城内へ忍び込む手引までしてやったものである。
だが、市之丞の為た手口も、洗ってみると、極めてまずい、坊っちゃん仕事でしかなかった。――やはり焼け死ぬ虫は愚には違いないが、無心の絵行燈の灯皿の方に、むしろ罪ふかいものがある。無心であっても、罪ふかい灯のまたたきに、処女は心しなければならない。
(昭和十三年八月)