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ゆうがおのもん

夕顔の門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《夕顔の門(ゆうがおのもん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,956 字 · 29 頁

青空文庫

鷹小屋の呻き

一

と、周平は、太左衛門の背に足をかけて、直ぐ塀の内へ躍り込もうとした。

『まあ待て、まあ待て』

太左衛門は、背をかわして、彼やその他を、抱き止めながら、

『理不尽に乗り越えては、兵庫めが云う通り、此方の落度になり、彼奴には思うつぼに篏るわい。忌々しいが胸を撫でて――。な、これ……此処は胸を撫でて』

と、何か囁いた。

四名は、地だんだを踏みながら、門を睨めつけて、

『――かッ』

と、唾を吐きかけ、そして、何処ともなく立ち去った。

鷹小屋の呻き

一

楠平やその友達や、尾形一家の者が立ち去って行くらしい跫音に、曾我部兵庫は、ほっとして、家の中へ這入りかけたが、ふと、暗い大地を振向いて、

『お市』

と、呼んだ。

お市は、そこに居るか居ないか分らないように門の脇に、身を沈めたまま、平たく俯っ伏している。

『――冷えるぞ』

それも常の声だった。

『…………』

突然、お市は、嗚咽しはじめた。肩は波を打って、泣きじゃくった。

『――泣いている間に、傷負はことぎれるぞ。はやく鷹小屋へ行って手当をしてやれ』

云い捨てて、兵庫は家の中へかくれ、又、机の前に、黙然と坐った。

――坐ったが、然し彼もさすがに、筆は持てなかった。