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やまとこじふうぶつし

大和古寺風物誌

亀井 勝一郎

線上閱讀亀井 勝一郎《大和古寺風物誌(やまとこじふうぶつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,647 字 · 215 頁

青空文庫

であり、「篤敬三宝」であり、「承詔必謹」であった。長い苦難を経て、魂の憩いは漸く飛鳥の野にも訪れたかに思わるる、そういう仄かな黎明時代を太子は築かれつつあったのである。

しかし禍根は必ずしも除かれていたわけではない。外戚として蘇我家の勢力は更に隠然たるものがあり、何時その野望があらわれるか期し難かった。太子は何故これに徹底的な抑圧を加えなかったか、馬子の兇暴を何故黙視しておられたか――後世史家の屡々問題としたところであるが、太子の憂悩もまたそこにあったと拝察される。それは単に蘇我家の政治軍事力の強大ゆえとのみは断じ難い。作戦の問題ではない。

系譜をみても明らかなごとく、欽明天皇より太子に至るまでの皇室には、蘇我一族の血統が最も親しくむすばれている。武内宿禰以来の名門として稲目が輔弼の大任を背負ったことも無視出来ない。太子の御父母も、御祖父母も、すべて蘇我家と親密な間柄にあり、太子の妃たる刀自古郎女もまた馬子の娘であった。同族をもって戦う悲痛はすでに青年の日に身をもって知っておられた。馬子、蝦夷、入鹿等の兇暴を国家のために黙視されなかったとはいえ、彼らの内奥よりの「和」