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やまとこじふうぶつし

大和古寺風物誌

亀井 勝一郎

線上閱讀亀井 勝一郎《大和古寺風物誌(やまとこじふうぶつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,647 字 · 215 頁

青空文庫

いまの奈良市の、郊外と云ってもいい、静かな田野のひらけはじめたところに、この有名な丘陵が横たわっている。なだらかな玉砂利の道を登って行くと、まず聖武天皇の御陵がある。これと並んでほんの二・三十歩離れたところに光明皇后の御陵がある。御二方そろって、あたかも比翼塚と申してもいいような有様の下に眠らせ給うておらるるのである。玉垣をめぐらしたその小高い御陵は、鬱蒼たる雑木に蔽いつくされ、昼なお暗い樹間には、古の栄耀を思わすごとく蔦葛の美しく紅葉して垂れさがっているのが仰ぎ見られた。往時の造営はどのようであったか、その名残はもとよりうかがうことは出来ない。千二百年の歳月は一切を自然と化してしまったのであろう。嘗つて背の君とともに心をつくして建立された東大寺を、また今は廃墟となった平城京を遥かに望見しながら、天平の花華とも仰がるる光明皇后は、佐保山の紅葉のもとに何を夢みておらるるだろうか。

さほやまのこのしたがくりよごもりにものうちかたれわがせわぎもこ

この一首、佐保山の御陵を詠じた会津八一博士の歌である。この感慨は現前の状景に対してもふさわしいが、その背景たる遠い古を偲ばしむる点で私にとっては一層なつかしい。