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やまとこじふうぶつし

大和古寺風物誌

亀井 勝一郎

線上閱讀亀井 勝一郎《大和古寺風物誌(やまとこじふうぶつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,647 字 · 215 頁

青空文庫

飛鳥白鳳を通じて興隆し来った文化の、更なる昂揚があったであろう。だがそういう開花の根底には、必ずしも天国のごとき平和が漂っていたわけではない。

私は日本書紀や続日本紀を読みつつ、後代より慕わるる美しい時代が、その底につねに暗澹とした苦悩を、悪徳の深淵を湛えているのをみて驚く。平和とはそもそも何だろう。平和とは内攻した血の創造の日々である。対外的には静謐であろうと、一歩国内の深部に眼をむけると、そこには相変らぬ氏族の嫉視と陰謀と争闘があり、煩悩にまみれた人間の呻吟がある。ひそかに流された血のいかに多いことであるか。歴史は私に平和の何ものであるかを教えた。飛鳥のみ代がそうであったし、天平といえどもこの例に洩れない。そして激烈な信仰や美しい詩歌や絢爛たる美術は、すべてこの暗黒を土壌として生育しているようである。

嘗て蘇我氏が、皇室の外戚として権をほしいままにしたこと、上宮太子の御労苦の一半はその抑制にあったことに就ては私は前に述べた。蘇我は滅びたが、代って天平のみ代にあらわれたのは藤原不比等の一族である。大化改新の功労者たる鎌足の息として、彼の漸く勢望を固め得たのは、聖武天皇の時代であった。