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やまとこじふうぶつし

大和古寺風物誌

亀井 勝一郎

線上閱讀亀井 勝一郎《大和古寺風物誌(やまとこじふうぶつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,647 字 · 215 頁

青空文庫

「悲劇からの誕生」という言葉を借りるならば、太子の信仰とはまさにそれであった。のみならずこの時代前後の天皇の博大な信仰は、すべて偉大な悲劇を母胎としていることを改めて痛感したのである。僕は太子の威徳を美しく伝えようとしたが、結果としてあらわれたところは壊滅の歴史であった。悽愴な殉教の歴史であった。信仰は何故かように果のない血を喚ぶのか。僕の恐怖感もこの点に発している。言説をもって解明出来ぬ。深淵を長く窺えば、深淵もまた汝を窺うであろうということが恐ろしいのである。

「以和為貴」とは周知のごとく十七条憲法冒頭の言葉である。僕は戦争中この言葉を奉じて生きてきたと云っていい。太平洋戦争が始ったとき、或る雑誌から覚悟を問われたとき、僕は「以和為貴」を以って回答とした。戦争二年目にして再び同じ問いが発せられたとき、再びこの言葉を以って答えとした。三度問われてもやはり同じように答えたであろう。一国の敗北は、必ずしも外敵のために敗れるのではない。真の敵は常に内部にある。国内同族の相剋頽廃が致命傷となることは歴史の常識と云ってよい。太子の言葉も切実な体験に発していることは前に述べたとおりである。