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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁
そこに一箇の囚徒が阿修羅のように荒れています。
その荒れている囚徒というのはすなわち、宇津木兵馬と室を同じうした、かの奇異なる武士でありました。仮りにその名を南条と呼ばれていた武士でありました。
南条は左の小脇にまだ病体の宇津木兵馬を抱えながら、右の手と足とを縦横に働かせて、組みついて来る同心や手先や非人を取って投げ、蹴散らして、阿修羅のように戦っているのであります。
南条は外まわりの総高塀を背にして、寄り来る人々を手玉に取りながら、一歩一歩と高塀の方へ押着けられて行くのであります。いや押着けられて行くのではない、自分からジリジリとさがって行くようであります。
いよいよ南条はその塀際までさがった時に、手早く塀の一端へ手をかけました。その手をかけたことによって気がつけば、見上げるような高い塀の上から、一条の縄梯子が架け下ろしてあります。
この縄梯子は尋常の梯子よりは大へん狭いものでありました。狭いものであったけれども、かなり丈夫に見えました。
それは尋常の縄ではありません。このとき思い当るのは、手内職というてこの奇異なる武士が、暇にまかせて拵えておいた紙撚であります。