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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁

青空文庫

米友は小田原提灯を翳していると、やっぱり土を嗅いでいたムク犬は、急にその巨大な体躯を跳上げて、社の左の方から廻って裏手へ飛んで行きました。

「ムク、待ちろやい」

米友は急いでそのあとを追いかけて、この荒れたささやかな天満宮の社の後ろへ廻って見ると、後ろは杉の林であります。

米友はムクを信じています。ムクの導いて行くところにはいつも重大の理由も事情も存するということを、米友はよく信じているが故に、五里霧中の上の闇の夜の杉林の奥をも、疑わずに踏み込んで行き得るのであります。

ほどなく宇治山田の米友が、この杉の林を出て来た時には、背中に一人の人を背負っておりました。小さい米友の身体に大の男を一人背負って、濛々たる霧と靄と闇との林を出て来ると、例のムク犬は勇ましく、またも前の天神の祠から松並木を、先に立って案内顔に走って行くのであります。

「待てやい、ムク」

道の傍に井戸を探し当てた米友は、その前へ棒を突き立てて、

「この人に水を飲ませてやりてえんだ、俺らも咽喉が乾いたわい」

米友は釣瓶を投げて水を汲み上げてから、背中の人を卸して、

「どうだい、水を一杯飲んで、気を確かに持って、一言名乗って聞かしてくんねえな、お前はどこの者で何という名前だか、それを一言いって聞かしてもれえてえんだ」