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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁

青空文庫

一廉の人物のように言い囃された能登守、それをこうして見ると、振られて帰る可愛い優男としか思われないのであります。

それと思い合わすれば、このごろお邸のうちに噂のないことではありません。殿様がお君さんを御寵愛になる……という噂が誰言うとなく、口から耳、耳から口へと囁かれているのであります。

けれども、それがために誰も主人の人柄を疑う者はありませんでした。その地位から言えば諸侯に準ずべき人なのですから、幾多の若い女を侍女として左右におくことも、また妾としてお部屋に住まわしておくことも、更に不思議なこととは言えません。寧ろそういうことをせぬのが、その周囲の人から不思議がられるのでありました。

能登守は一人の奥方に対してあまりに貞実でありました。その奥方が病身なために能登守は、女房がありながら鰥のような暮らしに甘んじていることは、家名を大事がる近臣の者を心配がらせずにはおきません。

妾をおくことを、お家のための重大責任として家来が諷諫したものでありました。けれども能登守は、それを悟らぬもののようであります。

お君を有野村の藤原家から呼び迎えたことが、誰からも勧めずに、能登守自身の発意に出たことは、家来の者を驚かすよりは、かえって欣ばせたのでありました。