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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁
宇津木兵馬の耳にもその大きな声が聞えたから愕然として驚きました。スヤスヤと眠っていたお君の眼を醒まさせるくらいに大きな声でありました。
「宇津木様、何でございます、あの騒ぎは」
「峠へ狼が出たそうな」
「怖いこと、狼が?」
「そうして人を二人半食い殺したと聞えたけれど、二人はよいが、半というがちとおかしい」
兵馬とお君とはこう言って話をしている間に、例の地声の大きな馬方は店の方で、お角やその他の者を相手に、盛んに大声をあげてその講釈をしているらしくありました。それが洩れて聞えるところによれば、狼に食い殺されたのは笹子峠の七曲りあたりであって、食い殺された人は一人の薬売りと、それから魚屋と、もう一人危なく逃げたのは道中師であるらしく聞えます。半というのはおそらくその道中師が命からがら逃げたから、それで半と言ったのだろうと思われます。
兵馬は、その前路を控えた身で、こんな話を聞くことは、さすがに快しとはしませんでした。狼というものの存在はかねて聞いてはいるし、またこのあたりの山々にはそれが住んでいて、時あっては人里までも出て来るという話も聞きました。けれども、そんな話をお君に聞かせることはよくないと思って、それで不快の感じがしたのであります。