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だいぼさつとうげ

大菩薩峠4

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁

青空文庫

果して隠れ了せてこの地を逃げ延びることができればそれは結構であるけれど、もうその評判がお松の耳にまで聞えるようになっては、この狭い天地でさえも危ない――とお松はそれを考えると、剣の刃を渡るようにハラハラしました。

「お松ちゃん、お松ちゃん」

窓の戸をトントンと叩いて、わが名を忍びやかに呼ぶ者のあるのは覚えのある声で、お松にとっては必ずしも寝耳に水ではありません。

「はい」

窓の戸を開きますと、そこから首を出したのは七兵衛でありました。

「おじ様」

「お松、ちょっと耳を貸してくれ」

七兵衛の来るのは、いつもあわただしいものであります。いつなんどき来て、いつなんどき帰るのだかわかりませんでした。こうして夜中に合図をして不意に訪うことには、少なくともお松は慣れているのであります。

「兵馬さんはいるよ。うむ、うむ、この甲府の中に、それはな、思いがけないところへ逃げ込んでいるから、まあ今のところ無事だ。今のところは無事だけれども、その大将がこれからどうするつもりかそれは知れない、いったん隠して置いて養生をさせて、それから改めて突き出すつもりなんだか、それとも隠し了せて逃がすつもりなのか、そこのところがわからねえ」