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だいぼさつとうげ
大菩薩峠4
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠4(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 264,133 字 · 524 頁
「血が流れていて人が殺されていないから不思議。お女中、そなたはいずれの、何という者」
「いいえ、あの……」
「包まず申すがよい」
「あの、わたくしは……」
お角は問い糺されて、おのずから口籠ります。その口籠るので、若党、草履取はお角にようやく不審の疑いをかけると、
「これには何ぞ仔細があるらしい、ともかく屋敷へ同道致すがよかろう」
と言ったのは、人品骨柄のよい覆面の武家でありました。その声を聞くと爽かな、まだお年の若いお方と思われるのみならず、その声になんとやら聞覚えがあるらしく思われるが、お角は急には思い出されません。
「いいえ、わたくしはここで失礼を致します、もうあの、大丈夫でございますから」
と言って、やみくもに袖を振切って駈け出してしまいます。
一行の人はその挙動を呆気に取られて見ていたが、別に追蒐ける模様もなく、屋敷へ帰ってしまいました。
その屋敷というのは駒井能登守の屋敷であって、覆面の品のよい武家は主人の能登守でありました。
このことについて、その翌日、何か風聞が起るだろうと思ったら、更に起りませんでした。あの附近を通った者が、血の痕のあることをさえ気がつかずにしまいました。