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たじゅうとそのいぬ
太十と其犬
長塚 節
線上閱讀長塚 節《太十と其犬(たじゅうとそのいぬ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,769 字 · 32 頁
姻戚のものとも諮って家を掩いかぶせた其の竹や欅を伐ることにした。彼は監獄署へ曳かれるのは身を斬られるよりもつらかった。竹でも欅でも何でも惜しくないと彼は思った。だが其頃はまだ竹や木を伐採するには季節が早過ぎたのと一つは彼の足もとをつけ込む商人の値段は皆廉かった。有繋に彼も躊躇した。恐怖心が湧起した時には彼には惜しい何物もなかった。それで居て彼は蚊帳の釣手を切って愚弄されたことや何ということはなしに只心外で堪らなくなる。商人は太十に勧めた。太十はそれが余りに廉いと思うとぐっと胸がこみあげて
「構わねえ、おら伐らねえ」
と呶鳴った。
「おれが死んじまったらどうも出来めえ」
と更に彼は自暴自棄にこういうようになった。唯一人でも衷心慰藉するものがあれば彼は救われた。習慣はすべての心を麻痺した。人は彼に揶揄うことを止めなかった。そうして彼の恐怖心を助長し且つ惑乱した。彼は全く孤立した。
其日は朝から焦げるように暑かった。太十は草刈鎌を研ぎすましてまだ幾らもなって居る西瓜の蔓をみんな掻っ切って畢った。そうして壻の文造に麦藁から蔓から深く堀り込んでうなわせた。文造はじりじり日に照りつけられながら、時節でもない畑をうなった。