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しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇談クラブ(全)(しんきだんクラブ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,139 字 · 208 頁

青空文庫

少し高くなった春の陽は、朝乍ら妙に薄眠たく射して、不風流な目明しの髷節へ、桜の花片が二つ三つ散りよどみます。

「御苦労様で御座います」

庫裡の腰高障子を開けて出て来た一人の男、赤い大黒頭巾を冠せた子供を深々とおんぶして、浅葱の手拭で頬冠りをしたまま、甚々端折りに長刀草履を穿いて、ヒョコヒョコと裏門を出て行きました。

「あ、待て待て、お前は何んだ、何処へ行くんだ」

三吉は欠伸を噛み締め乍らも、職業柄斯う誰何すると、

「寺男で御座います、あの通りの騒ぎで御座いますから、子供を背負って、皆様へ差し上げるお茶受を買って参ります」

「よしよし」

「それでは、行っても宜しゅう御座いますか」

「うるせえな、宜いってことよ」

「ヘエ――」

寺男は其の儘町の方へ、口調や物越しに似合わぬ活溌な足取りで、飛んで行ってしまいました。

「兄イ」

本堂の方から仲間の者の声。

「何んだ」

「今しがた其方へ変な人間が行きアしないか」

「変な人間なんざ来ねえよ」

「おかしいなア、子供をおんぶしてねんねこを着て――」

「おッ、それなら来たが、彼奴は何うかしたのか」

「それが『寺荒し』だよ、何方へ行った」

五、六人、一団になって裏門へ飛んで出ました。