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しんきだんクラブ

奇談クラブ(全)

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇談クラブ(全)(しんきだんクラブ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,139 字 · 208 頁

青空文庫

貧しい、餓い幾日が続きました。屈辱と穢汚の中に、私の自由は次第に蘇がえって行きます。私はもうすっかり虚無的な乞食根性になり済して、いつかの夜の冒険も忘れがちになって居りました。

この儘で過ぎてしまえば、私は一生乞食で終ったかも知れませんが、幸か不幸か、或る晩私は、もう一度あの豪奢を極めた寝台の上で眼を覚したのでした。

「若様、皆様お揃いで入らっしゃいます。お召し換え遊ばしませ」

いつかの若い女中が、お面のような無表情な顔で、斯う言うのを聞くと、私はもうガバと飛び起きて、隣の風呂場に飛び込んで居りました。汚れた顔や手足や、埃だらけな頭を見られ度くないと言うよりも、兎もすれば私の手から漏れ出しそうな、この果敢ない世界を確と押えようとしたのでした。

一と風呂、念入りに洗い落して、今日は爽やかな絹セル、焦茶色の羽織を引っ掛けていそいそと客間へ行くと、顔ぶれは前の通り、葉山夫人と、梅谷と金井と、薫と花枝は、飛び付くように私を迎えてくれます。

「秀麿様、今晩は有難う。久しく呼んで頂かないんで、随分待ち遠でしたワ」

というのは、人なつこい花枝、今晩は清々しい石竹色の洋装で一段と立ち優って美しく見えます。