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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇談クラブ〔戦後版〕(きだんクラブ〔せんごばん〕)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,902 字 · 22 頁

青空文庫

二

「有難き仕合せ」

相談は纏まりました。この君臣技を競うという、不思議なゲームが、後の発展は兎も角、面白可笑しく着手されることになったのです。それは天保八年正月のことでした。

二

一立斎広重の描いた東海道五十三次の名所絵の中でも、勢州亀山城は、一種特別な威厳と親しみを持っております。多分それは、相手は国主大名でも、同じ浮世絵師仲間の情愛が、善良な心の持主だった広重に、あんな優れたものを描かせたのでしょう。保永堂版の亀山の雪の曙、隷書東海道の亀山城の元旦などを見ると、この考え方が決して出鱈目でないことがわかる筈です。

それは兎も角、この話は江戸の下谷大名小路、石川家上屋敷に起ったことで、本国の勢州亀山とは関係がありません。

彫物の名手六郷左京は、自分の御長屋に引下って待っていると、間もなく木曾から取寄せたという、檜の良材を三本、人足が十人あまりで担ぎ込みました。

「成程これなら」

材木の胴を叩いたり、小口の木目を調べたり、六郷左京悦に入っているところへ、

「御免遊ばせ」

静かに訪れたのは、暫く拝借することになったモデル――三人侍女の一人、一番年嵩で、一番美しいといわれた多与里でした。