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ぜにがたへいじとりものひかえ
奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 31,249 字 · 62 頁
五
家内はそれを言い立てて、離屋は松前屋が娘に遺したものだと申し、自分で造作を直して、ここに立て籠ってしまいました」
内儀の死に暗い影があるとわかって、主人の源左衛門は妙に逃げ腰になります。尤も、寺に戸籍のあった時代で、祝言も仲人もなく、勝手に後家といっしょになった場合は、世間への名聞も憚って、表向は後取りと言えないわけで、それを慮って、源左衛門は店や蔵の譲受を、証文にしておいたのでしょう。
五年前、松前屋三郎兵衛の急死に、悪い噂も立ったくらいですから、この証文なども、三郎兵衛が生きているうちに書いたのか、死んだ後で、三郎兵衛の女房だったお駒に判を取出させて作ったのか、お駒が死んだ今となっては、詮索の途もなくなったわけです。
五
「ところで、母家を見せて貰いたいが」
「私が御案内いたしましょう、どうぞ此方へ」
提灯が二梃、平次と八五郎は、番頭の為之助に案内させて、お勝手から入りました。
板敷に小さくなっているのは、中年者の下女のお鉄、働きものではあるでしょうが、いかにも愚直そうで、何を訊いても埒があきません。
「御内儀さんが可哀想でなりません。見る人をみんな怖がって、とうとうあんな座敷牢を拵えて、自分で入ってしまいましたが、離屋へ入るのはお嬢さんと私だけでございましたよ」