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ぜにがたへいじとりものひかえ
奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 31,249 字 · 62 頁
六
「あッ」
さすがに血の跡はありませんが、今洗ったと言わぬばかりに、一尺以上の穂から、けら首へかけて濡れているではありませんか。懐紙を出して強く拭くと、紙の上には紛れもない脂がベッとり。
六
元の部屋に帰った平次は、主人源左衛門の前にピタリと坐って、調べの跡を話した上、
「御主人、これをなんと見ます、槍は確かに人を突いたばかり、あの蔀の隙間から、二間三尺の槍を使えるのは、この家に二人とある筈はなく、――そのうえ御主人は、亥刻(十時)にこの家を出て、四半刻(三十分)もかかって妻恋坂に着いている、申開きが伺いたい」
平次の言葉も厳しくなります、が、主人源左衛門は、さして驚く色もなく、平然として平次を見返すのです。
「いかにも、重々の疑い尤もではござるが、私には身に覚えはない。しかし、お駒が私を怨んだのも無理はなく、私の行跡にも悪いことだらけ――」
「途中ですが、先代松前屋三郎兵衛の隠した一万両の行方、御主人は御存じでしょうな」
「いや、一向に知らない、実を申せば、幾度も幾度もお駒を責めたが、そればかりは教えてくれなかった。そんな事が、浅ましいようだが、二人の仲違いの因となったのであろう」