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ぜにがたへいじとりものひかえ

奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇譚 銭形平次 「銭形平次捕物控」傑作選(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 31,249 字 · 62 頁

青空文庫

ささやき加減に訊くのです。

「お前は確かに姉さんの声を聞いたのだな」

「え」

「そして手燭を持って飛び出した時は、姉さんはもう口をきけなかった?」

「井戸端の石の上に俯向になっていました。もう正気もなかったようです」

「姉さんの背中に、刃物が突っ立っていた筈だが――」

「あったようでした」

「それを誰が抜いたのだ」

「さア――」

お吉は黙ってしまいます。

「お前は木戸の方へ逃げて行く人影を見たと言ったそうだな」

「確かに見ました」

「着物か、人相かに覚えはないか」

「女のようでした」

「どうして女とわかった」

「唯そう思っただけで」

小娘の記憶はこれ以上にはよみがえりません。

「有難う、いろいろのことが解ったよ。もうみんなここへ呼入れても構わない――御主人にはもう少しききたいことがあるが」

平次は庭へ滑り出ました。後ろからついて来た小助と市兵衛。

「御主人、娘たち二人の仲は好かったのかな」

庭木戸のところに立止って平次は妙なことを訊ねます。

「仲の好い姉妹でした。世間様の褒めもので、――姉のお君はどっちかと言えばお人好しで、やくざの万次などにまで騙されましたが、妹のお吉は顔に似合わぬ気性者で、姉を伊賀井様に奉公に出すのも、万次風情と親しくなるのも、ひどく嫌がっておりました」