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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《妖虫(ようちゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 頁

青空文庫

そう云われると、なる程彼等は、如何にも人目をはばかる様に、顔を寄せて囁き合っていたに違いない。外の客からはずっと離れた隅っこであったし、外人達はてんでに大声で話し合っていたので、仮令内密話でなくとも、彼等の会話を他人に聞かれる気遣いはなかったのだが、それを更らにヒソヒソ声になって囁き合っていたのは、余程秘密の相談であったとは想像出来る。だが、……

「では、あの二人がそんな恐ろしい相談をしていたとおっしゃるのですか」

相川青年が思わず訊ねる。

「エエ、そうなのです。私はそれをすっかり聞いたのです」

「聞いたのですって? あの遠方の囁き声を、それに、外の人達がこんなにやかましく云っているのに。いくら先生の耳がいいからと云って、そんな馬鹿な……」

やっぱりこの人は頭がどうかしているのだ、幻聴に違いない。それをさも誠しやかに考えているのは、気でも狂う前兆なのではないかと、兄妹は寧ろそれが恐ろしく感じられた。

「ここに書いた通り、あの青眼鏡の男が喋ったのです」と京子はメニュを指さして、「その前の言葉は、ここへ書くひまがなかったけれど、実に恐ろしい事なのです。先ず最初、あの男は(いよいよやってしまうのだ)と云いました。