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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《季節のない街(きせつのないまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 頁
そしていま、七代目のかぼちゃが同居しているのだ。土川春彦は彼のことをばんくんと呼ぶが、どういう字を書くのかわからない。としは三十から四十のあいだであろう、中肉中背で、固太りのいい躯つきをしているが、動作はのろくさいし口がおもく、一日じゅうごろごろして、団扇を動かすのと、めしを食うとき以外には、殆んどなにもしないのであった。
「きみは英気をやしなっていたまえ、いまにぼくが事業を始めたらはたらいてもらうからな」土川春彦であるところのちょろはそう繰り返した、「きみの役はいまのところ聞き役さ、ぼくは話し相手なしじゃあ十分もがまんのできない性分でね、きみはただぼくの話の聞き役になってくれればいいんだよ」
ばんくんの眼尻がさがって眼が細くなり、厚い唇がごくかすかに動く。おそらく微笑したのであろうが、しんじつ微笑したのかどうかを判別するのは、困難なことだろうと思う。――この七代目かぼちゃの無口さと、動作のたとえようのない緩慢さには、さすがの土川春彦も内心おどろいたようであった。これまでのかぼちゃは同じのろまな怠け者でも、なにか一つ二つは家事の手助けをした。食事のあと片づけとか、掃除とか、火をおこすとか、水を汲むとか――完全にやらないとしても、とにかく手助けをするというかたちだけはみせたものだ。