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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《季節のない街(きせつのないまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 頁
若い井河くんは自分の箸を持ってちゃぶ台をまわり、鍋の脇に坐って、自分たち三人の取皿に、湯豆腐とぐをよそい、二つを松井くんと野本くんの前へ押しやると、自分はすぐさま喰べはじめた。
「僕にはなんのことかわからなかった」と島さんは云っていた、「速達とはなんのことだろう、と思っているとさ、二平さんはいまデスクの上へ出した物を鞄の中へ戻し、タイプライターへ蔽いを掛け、その蔽いの上からタイプライターをそっと撫でたね、二十秒ばかりそうやっていたかね、まもなく鞄を取って抱え、あの型の崩れた古いソフトをかぶって、なにも云わずに帰っていった」
「速達は解雇通知さ」松井くんが云った、「外国部のサラリーは二十日に出るんだが、サラリー分はきっちり働かせたわけだろうさ」
「二平さん速達が届きませんでしたか」島さんはこわいろを使って云った、「それで終りだ、あの人は十幾年か勤めたそうだ、それが一通の速達でオール・イッツ・オヴァ、二平さんがタイプライターを撫でていたのは、それだけが別れを惜しむ相手だったからだろうね」
「ああ居眠りばかりしていたんじゃ、友達もできやしないさ」と松井くんが云った、「細君と子供が五人、いちばん下はまだ幼稚園だそうだ」